思えば、まだ何一つ備品もなかったこの賃貸物件に初めて到着した本が、島田潤一郎さんの『電車のなかで本を読む』(青春出版社)でした。品出しする棚もなく、ただただ写真を撮っては「本当にこれから本屋さんをひらくのかしら」と首をひねったりしておりました。始めたばかりの頃は「いつまで続くかわからない」と弱気なことばかり口にしてきましたが、「おすすめの本は何ですか」と聞かれて困ったときはだいたい『あしたから出版社』(ちくま文庫)に助けてもらって、今日までなんとかお店を開き続けております。
その島田潤一郎さんがこの4月にみすず書房からエッセイ集『長い読書』を刊行されます。僕の大好きな長田弘や荒川洋治の読書エッセイも、みすず書房から刊行されています。当店でも開店当初から、全体の蔵書量に比してのみすず書房の割合の高さに我ながら「無謀か!」と呆れるほどでありました。島田さんから刊行情報を教わったときは思わず叫び声をあげてしまいましたが、当店でイベントをしてくださるというお申し出には絶句してしまいました、嬉しすぎて。そう、当店はまだひらいて1年足らずではありますが、私が夏葉社や島田さんの本を知ってからはそれなりの年月が経っているのです。不忍の一箱古本市でお会いした島田さんから『昔日の客』(ちゃんと新刊)と村上龍、村上春樹『ウォーク・ドント・ラン』(こっちは古本)を買ったのは、2011年5月のことでした。あの日から今日までを「入り口」ととらえるならば、なかなかに「長い入り口」と言えるのではないかしら、どうかしら。
当日は、店主服部がお話相手を仕りまして、新刊の『長い読書』のことや、夏葉社のこと、最近の島田さんのこと、あれこれお聞きしたいと思っています。はしゃぎすぎず、じんわりと楽しい時間になったら嬉しいです。どうぞ、ご一緒に。
長い入り口『長い読書』刊行記念 島田潤一郎トークイベント
4月28日(日)10時〜12時
参加費:2,000円
お問い合わせ&お申し込み:hon.iriguchi@gmail.com
満席となりました(キャンセル待ちで受付中です)。
島田 潤一郎(しまだ じゅんいちろう)
1976年高知県生まれ、東京育ち。日本大学商学部会計学科卒業。アルバイトや派遣社員をしながら小説家を目指す。2009年、出版社「夏葉社」をひとりで設立。「何度も、読み返される本を。」という理念のもと、文学を中心とした出版活動を行う。著書に『あしたから出版社』(ちくま文庫2022)、『古くてあたらしい仕事』(新潮文庫2024)、『90年代の若者たち』(岬書店2019)、『本屋さんしか行きたいとこがない』(同2020)、『父と子の絆』(アルテスパブリッシング2020)、『電車のなかで本を読む』(青春出版社2023)がある。
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